梅雨冷えの折、皆様いかがお過ごしでしょうか。吉田楓です。
5月23日に「ドメーヌ・ テン・ゲイジ ×「風花」鮨 特別メーカーズ ディナー」を開催しましたので、その模様をお届けします。
先月、山梨・明野にあるドメーヌ・デ・テンゲイジさんを訪れた際、真摯にワイン造りに向き合うお二人の姿に心を動かされ、「この風景と想いを、もっと多くの人に届けたい」と強く思ったことを、前回のブログでもお伝えしました。そしてその想いは、5月23日にメーカーズディナーイベントとして形になり皆さまにお届けすることができ、とても感慨深い時間となりました。明野町の自然と情熱が詰まった“ほんまもんのワイン”と、「風花」の鮨料理長 小川がこの日のために仕立てた一品一品。造り手と料理人の対話から生まれた唯一無二のコースをご紹介します。
【造り3種】×甲州エクスカーヴ2019
真鯛塩酢橘山葵
ボタン海老塩酢橘山葵
のどぐろ炙りおろしポン酢
最初に登場したのは、透明感のある甲州のスパークリングで、60本という極めて少ない生産量。その透き通るほのかに甘い味わいと合わせたのは、真鯛やボタン海老といった繊細な白身の造り。のどぐろ炙りにはほんのりとした苦みと香ばしさがあり、ワインの酸とミネラルが絶妙に寄り添ってくれました。
【つまみ】×ドゥ ラパン 甲州フレンチオーク熟成2022
白海老と桃とクレソン昆布〆和え
クリームチーズ茶碗蒸し
個人的に凄く印象に残ったのがこのペアリングです。自社畑の甲州は大樽で熟成されていて、口に含むと厚みのあるボディとバランスの良い酸味、ほのかに特有の苦味を感じます。白海老のねっとりとした食感、クリームチーズの滑らかでコクのある食感が樽熟成による厚みのある甲州ととても合いました。
【握り】×甲州 ジェイド2023
白烏賊
九絵昆布〆
北寄貝
このペアリングは、繊細な白身魚と貝類の握りに、甲州「ジェイド」の持つ青柑橘系の爽やかさが非常に印象的な調和を生みました。白烏賊の清らかな甘みと弾力には、ワインの柑橘香がそっと寄り添い、九絵の軽い昆布〆には、ジェイドのほどよい酸と旨味がバランスよく溶け込みます。北寄貝の力強いコリコリ感と甘みにも、ワインのフレッシュ感とサクッとしたテクスチャーが呼応し、互いを引き立て合う仕上がりに。全体として、青柑橘の爽やかな香りと、咀嚼してミネラルを感じるネタの口当たりが心地よく、全体を引き締めるような印象深いマリアージュとなりました。
【握り】×ラ リヴィエール ピノブラン2024
煮蛤 バター
車海老
鱚 海老おぼろ
アロマティックな花の香りと縦に伸びる酸味が特徴の「ラ・リヴィエール ピノ・ブラン」は、味わいの重心を低く保ちながらも、それぞれのネタにそっと寄り添い、豊かな調和を演出してくれました。煮蛤のバターのコクには、ピノ・ブランの酸が清涼感を添え果実味の柔らかさと相まって重たくならず品のある仕上がりに。車海老のしっとりとした甘みと、ワインの丸みと厚みのある口当たりが自然に溶け合います。鱚に海老おぼろをあしらった一貫には、ピノ・ブランの控えめながら確かな果実味とミネラルが、淡い旨味と優雅な甘みを静かに支え、全体をやさしく包み込みます。素材の持つ繊細な味わいを壊すことなく、背景に溶け込むように調和し、和の静謐さとワインの柔和さが交差する、穏やかで深みのあるマリアージュとなりました。
【つまみ】×エチュードデリジョンテ ロゼペティヤン2019
〆鰯の香味和え炙り帆立と苺うぃずルバーブジャム
きめ細かい泡に木苺、梅、赤プラムのような赤い果実とゼラニウムのような清涼感を伴った花の香り。ほんのりとピンクペッパーのようなスパイスが全体を引き締めるドライな味わい。青魚に梅を合わせるイメージと、自家製のルバーブジャムはワインの土の香りを引き立てました。
【つまみ】×マスカット ベーリーAロゼ
冷静煮鮑
煮蛸
梅トロ細巻き
自社畑のマスカット ベーリーAをフレンチオークで熟成。ベリー系のフルーティな香りと心地良いタンニンとベイキングスパイスなどのスパイス感が広がります。穏やかな酸味とともに、中盤から余韻にかけて重心の低さとふくよかさを感じさせるマスカット・ベーリーA ロゼは、咀嚼してタンニンがほどけるような蛸や鮑などのネタと高相性でした。そして梅トロ細巻にはロゼの梅を想起させるフレーバーがマッチしたペアリングとなりました。
【握り】×ラ サンセリテ マスカット ベーリーA
赤身赤ワイン漬け
中トロ
炭火炙りトロ
穴子子丼 ぶどう山葵
上ノ山の契約農家さんの中でも一番凝縮感のある葡萄が使用されているワイン。果実の強さを感じてもらうべく、敢えて樽を使用しない造り。ブラックチェリーやブルーベリーと、カカオやバニラを思わせる香ばしい香りが調和します。ベーリーAらしからぬ力強い豊富なタンニンを感じます。赤ワイン漬けマグロの赤身は、控えめな醤油感とワインの優しい酸味が見事に重なり合い、山葵のさわやかな余韻がすっと抜けていく軽やかさが絶妙に調和しました。炭火炙りトロでは、炙りの香ばしさとマスカット・ベーリーAの香りが重なり、脂の濃厚さに負けない包容力を感じさせてくれました。穴子小丼はブドウ山椒の爽やかさがワインと相まってより明るさをもたらしました。
締めのフルーツでは、ウサギの形に模したキウイが、ワイナリーのロゴに使われているウサギのチョコとアンに見立てられていて、可愛らしさと遊び心を演出。ワインの余韻にある果実味と共に、食事の締めくくりに華を添えていました。
今回、初めてワインディナーに携わる機会をいただき、料理とワインが生み出す調和の奥深さ、そしてそれをお客様にお届けしたいという情熱を改めて感じることができました。ひとつひとつのペアリングに触れ、お互いを引き立て合い、寄り添いながら一体になっていくさまに感動しました。そして何より、お二人とお客様との間にワインと料理を通じて会話が生まれ、空間がやわらかく温まっていくのを感じた時、この仕事の魅力と意義を実感しました。今回の学びを活かし、今後もひとつひとつ丁寧に積み重ねてまいります。
今後も日本料理「風花」では、ワインだけでなく日本酒とのペアリングイベントやコラボレーションディナーも開催予定です。
2025年6月27日(金) 獺祭メーカーズディナー
https://conrad-tokyo.hiltonjapan.co.jp/plans/restaurants/dinner/kazahana-2506
2025年8月22日(金)銀座 小十 アート・オブ・ハーモニー
https://conrad-tokyo.hiltonjapan.co.jp/restaurants/lp/20th-anniversary
皆様のお越しを心よりお待ちしています。
日本料理「風花」 吉田 楓
25 Jun, 2025