私ごとですが、11月6日(月)に厚生労働省より「卓越した技能者(現代の名工)」の栄誉を授かりました。
名工というと、特に日本では「モノ作り」というイメージがありますが、我々「ソムリエ」も匠の技を有する専門職業として選考の対象になるのです。
私がホテルに就職し、世界一のソムリエを目指したいと両親に告げた時、母は「他人が作ったものを運んで、注ぐだけの仕事ではなく、何か形に残るものを作るような仕事に就きなさい」と言って反対したのを今でも思い出します。悔しくて、悔しくて仕方ありませんでしたが、私の親たちの世代は、やはりモノ作り、目に見えるモノを信じる時代だったのだと思います。
そんな「モノを作らないソムリエ」を含め、サービスといういわゆる「形に残らないもの」を生業とする職業が、現代の名工として表彰されるようになった、世間的にソムリエという職業が広く認知されるようになった背景には、私よりもはるか以前からソムリエとしての認知度を高めるために、並々ならぬ努力をしてくださった諸先輩方がいたからこそと認識しております。
そして、モノが溢れ、物質的に満たされる豊かな時代になったからこそ、「形に残らないからこそ価値がある」職業として、サービス業ひいてはソムリエという職業を評価していただけるようになったのではないかと思っております。
形や記録には残らない、そんな仕事だからこそ、人々の記憶に残る、人々の思い出に残る仕事として、今後も「ソムリエ」という仕事に磨きをかけていきたいと思います。
エグゼクティヴ ソムリエ
森 覚
20 Nov, 2017